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退職金の見直しは役所にとっても重要事項
日本アセアンセンター:出向の国家公務員40人、退職金「二重取り」 本省戻る際支給 平均200万円、国庫返納へ
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国でつくる国際機関「日本アセアンセンター」(東京都港区)が、外務省や経済産業省から出向してきた国家公務員に対し、本省に戻る際、退職金を支給していたことが15日、明らかになった。1981年の設立以来、09年まで約40人が1人平均で約200万円の退職金を受領。一方で、出向元の各省は国家公務員の退職金の算定ベースとなる勤続年数に出向期間を加える「二重取り」を認めていた。政府は支給した退職金の総額約8000万円についてセンターに国庫返納を求め、一部の対象者はすでに返金に応じている。【坂口裕彦、念佛明奈】
日本アセアンセンターはASEANとの貿易・投資促進や観光交流事業を主な業務としており、職員数はASEAN加盟国を含め32人。日本政府が全体の9割近い運営資金を負担し、11年度予算でも約6億円を拠出した。外務、経産、国土交通省から1人ずつ出向している。
外務省やセンター幹部によると、「二重取り」をしていたのは、これら三つの省庁から出向していた約40人。ほとんどが2~3年で元の職場へ戻った。一般職の国家公務員は国際機関に派遣されても、公務員としての身分を持ち続けるが、センター側は発足時からの内部規則に基づいて、本省に戻る際にも退職金を支給。一方で、派遣期間中の年数は、国家公務員の勤続年数として加算されていた。
センターは設立以来、一貫して外務省OBが事務総長をつとめていた。しかし、09年4月にコンサルタント会社経営の大西克邦氏が公募で就任し、退職金の二重取りが発覚したという。同年秋にはセンターの顧問弁護士からも「社会通念上、公平性を欠く」と指摘され、省庁出向者への退職金支給をとりやめた。
自民党の河野太郎衆院議員が退職金をさかのぼって返納する必要性を指摘し、今月に入り、日本政府も応じる方針を決めた。センターへの出向経験者は、分割払いなどでセンターに納付し、その後、国庫に返納する。
外務省アジア大洋州局地域政策課は「退職金の件は、2年前まではまったく認知していなかった。返納の必要性があるとも判断し、センターに改善を促した」と説明している。
[毎日新聞社 2011年12月16日(金)]