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長崎の中小企業で実際に表面化した「基本給連動型退職金制度」の問題点

退職金制度イコール基本給連動型?

退職金制度というと、まずアタマに浮かぶのは「基本給連動型退職金制度」です。現在でも、多くの中小企業で導入されています。また、公務員の退職金制度は「基本給連動型退職金制度」ですし、なんとなくオーソドックスな退職金制度のような印象を受けます。

長崎においても多くの中小企業が「基本給連動型退職金制度」を導入しているようです。

最近お付き合いさせていただくようになった長崎の中小企業では、数年前に退職金制度を実施していましたが、この長崎の中小企業も「基本給連動型退職金制度」でした。この長崎の中小企業の社長に「基本給連動型退職金制度」を導入した背景を訊いたところ、顧問の税理士さんと相談して導入した旨の回答でした。一般的な退職金制度だと思ったようです。

しかし、近年、「基本給に連動しない退職金制度」に変更する企業が年々増えています。この動きは、(社)日本経済団体連合会が2年ごとに実施している「退職金・年金に関する実態調査結果」にみることができます。

増えている“基本給に連動しない”退職金制度

1998年同調査では「退職金算定基礎額が賃上げ額とは関係ない」(基本給に連動しない退職金制度)とする企業は30.3%であったものが、2010年同調査では72.3%になっています。

これは低金利時代への対応や年功的な退職金制度の見直し等を背景に、主に「ポイント制退職金制度」への見直しが進んだものと考えられます。2010年同調査では「退職金算定基礎額が賃上げ額とは関係ない」とする企業の81.9%が「ポイント制退職金制度」を導入しています。

「ポイント制退職金制度」が中小企業にピッタリかどうかについては、中小企業の労務管理の専門家である社会保険労務士・佐藤信吾としては疑問に思っていますが、いずれにしても、「基本給連動型退職金制度」は見直しの時期に来ているのではないか思います。

私は、長崎の社会保険労務士として、地元密着で長崎の中小企業の労務管理のアドバイス活動を続けてまいりました。特にこの10年間は「適格年金の廃止問題」への対応もあり、長崎の中小企業の退職金制度の見直しにかかわることが数多くあり、社会保険労務士として多くの経験をさせてもらいました。

次は、長崎の中小企業で実際に表面化した「基本給連動型退職金制度」の問題点の事例です。

中小企業の事例から見る 「基本給連動型退職金制度」の問題点

退職金の事例 1:
同時期に二人の定年退職者が出て、長崎の中小企業の社長は
おもわずビックリ!

長崎の中小企業A社(本社:長崎県長崎市)では、今月2人の社員が定年を迎える。甲部長と乙係長である。この長崎の中小企業の総務担当者は通常通り各人の退職金計算書を作成し社長に提出した。その計算書を見た長崎の中小企業の社長は、おもわずビックリ! いつも頼りになる甲部長と日頃からその仕事ぶりにイライラしている乙係長の退職金が同額だったのである。

【 長崎の社会保険労務士・佐藤信吾の見方 】
在職中の貢献度を退職金に反映させられない

「基本給連動型退職金制度」では、退職金額を「退職時の基本給×勤続年数に基づく乗率」で算出します。

よって退職時の基本給と勤続年数が同じなら当然に退職金額も同じになります。「基本給連動型退職金制度」では在職中の貢献度をダイレクトに反映させることができないところに、使い勝手の悪さがあります。

中小企業の労務管理の専門家である社会保険労務士・佐藤信吾としては、

  • 中小企業の基本給はどうしても社員の生活給的な色合いが強い
  • 基本給に貢献度をダイレクトに反映させることは難しい

と考えています。この長崎の中小企業の社長が、退職金に在職中の貢献度を反映したいと考えるのならば、「基本給連動型退職金制度」を見直す必要があります。

退職金の事例 2:
定年延長で、長崎の中小企業の社長はおもわずビックリ!

長崎の中小企業B社(本社:長崎県佐世保市)の定年は、従前は60歳であり、定年後は希望者全員を再雇用していた。今年になって、この長崎の中小企業の社長は、長崎労働局主催の改正高年齢者雇用安定法セミナーに参加した。

セミナー終了後、「長崎の中小企業も定年65歳時代を迎えた」と感じたこの長崎の中小企業の社長は、65歳定年延長を決断し、翌月実施した。

この長崎の中小企業の社長は、来年60歳を迎える社員に対して、例年どおり「60歳になると基本給が30%下がるけど、定年延長したからこれからも頑張ってくれ」と言ったところ、「定年延長は感謝します。しかし、退職金が大幅に下がるので、基本給の引き下げは受け入れられません」とキッパリ言われた。この長崎の中小企業の社長はおもわずビックリ!

【 長崎の社会保険労務士・佐藤信吾の見方 】
中小企業は安易に定年延長してはならない

「基本給連動型退職金制度」では、退職金額を「退職時の基本給×勤続年数に基づく乗率」で算出します。

よって、退職時の基本給が下がれば退職金額も下がります。そのせいで「基本給連動型退職金制度」を導入している中小企業では、賃金制度や基本給の見直しがスムーズにいかないことがよくあります。

実は、この長崎の中小企業の退職金の事例には後日談があります。社長は、例外は作れないと判断し、今回60歳を迎える社員の基本給を30%下げて賃金を支給したところ、この社員は長崎労働基準監督署に駆け込みました。

後日、この長崎の中小企業の社長は、長崎労働基準監督署の監督官より呼び出しを受け、「中小企業といえども、一方的な不利益変更は許されません。このままでは賃金の一部不払いになります。」と強く言われたため、しぶしぶこの社員の基本給をもとに戻しました。

この長崎の中小企業の賃金水準は長崎県内ではかなり高く、退職金制度が「基本給連動型退職金制度」でなければ、60歳を迎える社員も基本給の30%引き下げを渋々であれ受け入れたものと推測します。

また、この長崎の中小企業の社長が65歳定年延長を決断した背景には、長崎労働局主催の改正高年齢者雇用安定法セミナーで、定年延長すると「中小企業定年引上げ等奨励金」という助成金を受給できると知ったこともあります。

中小企業の労務管理の専門家である社会保険労務士・佐藤信吾としては、中小企業は「中小企業定年引上げ等奨励金」等の助成金を受給できるからといって安易に定年延長すべきではないと考えています。

退職金の事例 3:
退職給付引当金で、長崎の中小企業の社長は
おもわずビックリ!

長崎の中小企業C社(本社:長崎県長崎市)は、5年前から会計士の指導により、退職金の債務を明確にするために退職給付引当金を計上していた。この長崎の中小企業の総務担当者は、今年も社員ごとの期末時における自己都合退職金額を集計して退職給付引当金の繰入額を算出した。その繰入額を見たこの長崎の中小企業の社長は、おもわずビックリ!
「今期は赤字になってしまう」

【 長崎の社会保険労務士・佐藤信吾の見方 】
退職金倒産もあり得る

「基本給連動型退職金制度」では、退職金額を「退職時の基本給×勤続年数に基づく乗率」で算出します。

基本給は通常毎年上昇しますし、勤続年数も当然毎年上昇します。上昇するもの同士を乗じるわけですから、年を経るにつけ二次関数的に退職金額は急上昇していきます。

高金利の時代は、複利による利息でその退職金額の急上昇をカバーできていましたが、利息がほとんどつかない現在では、その分の追加負担が経営を圧迫する大きな要因になっています。「退職金倒産」も十分あり得る話になっています。

中小企業の労務管理の専門家である社会保険労務士・佐藤信吾は、中小企業の財務や会計については詳しくありませんが、最近は、長崎の中小企業でも銀行や取引先等から退職金債務についての問い合わせが増えたように聞いています。

退職金制度の見直しで労務トラブルに発展しないために

このように、「基本給連動型退職金制度」は中小企業の社長にとってさまざまな問題点を抱えています。特に問題なのは、退職時の基本給が決まらないと退職金がいくらになるのかわからないところにあります。

長引く景気低迷で、多くの中小企業で賃金の見直しの可能性が高まっている現状を考えますと、「基本給連動型退職金制度」は従業員にとっても不安の残る仕組みになっているといえます。

中小企業の労務管理の専門家である社会保険労務士・佐藤信吾としては、「基本給連動型退職金制度」の見直しをお勧めしますが、退職金は従業員にとって重要な労働条件の1つであるため、しっかりとしたステップを踏んで見直しを進めませんと大きな労務トラブルに発展しかねません。退職金の見直しを数多く経験している地元の社会保険労務士に相談されることをお勧めします。

佐藤信吾

長崎の中小企業の退職金・就業規則・賃金体系の整備は地元長崎の佐藤社会保険労務士事務所(社会保険労務士 佐藤信吾)にお任せください。

<主要営業地域>
長崎市・佐世保市・大村市・西海市・松浦市・平戸市・島原市・川棚町・東彼杵町・波佐見町・他長崎県内

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