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退職金は401kに切り替わっているところも多くなっています

来年1月から「確定拠出年金制度」が変わる! そのメリットとは?

 

確定拠出年金には「個人型」と「企業型」の2種類がある。
 今から10年前に日本でも始まった「確定拠出年金制度」。現在では1万5000社以上の企業が導入し、加入者も約405万9000人(2011年7月末時点)いる。ただ、加入していても関心のない人は多い。
 しかし、12年1月からの制度の改正で、今後はより身近な存在になる可能性が高い。なぜなら、今後は企業型の確定拠出年金でも従業員が掛金を支払えるようになるからだ。
 制度改正が施行される前に、意外と知らない「確定拠出年金制度」の基本と今回の改正について正しく知っておこう。

■そもそも「確定拠出年金制度」って何?
「確定拠出年金制度」とは、現在の公的年金を補完するものとして2001年10月に導入された新たな企業年金制度のこと。米国に同様の制度「401k」があることから、「日本版401k」などと呼ばれることもある。
 厚生年金基金や確定給付企業年金などでは、将来受け取れるお金の計算式が確定しているのに対して、確定拠出年金の場合は掛金が確定しており、将来受け取れる金額は運用の成果によって変わってくるのが1番の特徴だ。
 つまり、仮に同じ年齢、同じ給料の社員が2人いたとして、同じ掛金をもらっていたとしても、運用次第でそれぞれが受け取れる年金額は異なる可能性があるということになる。
 また、掛金をどのように、どんな商品で運用するかを、加入者自身が決めるのも確定拠出年金の大きな特徴の1つ。といっても、あらゆる金融商品が運用対象になっているわけではなく、預貯金、保険商品、投資信託などから3つ以上の商品が選択肢として提示され、加入者がその中から好きなものを選ぶという方法が取られている。
 さらに、確定拠出年金のその他の特徴としては、転職時などに年金資産を持ち運べること(ポータビリティ)や、自営業者や企業年金の制度がない会社の従業員にも対応していることが挙げられる。
 自営業者など国民年金の第1号加入者や企業年金がない会社の場合は、個人が掛金を支払う「個人型」の確定拠出年金を利用できる。この場合、支払った掛金については全額所得から控除される。
 なお、「企業型」の制度の場合は、企業が掛金を支払う。詳細は上表を参照のこと。
 「企業型」「個人型」いずれの場合も、運用している資産の運用益はその都度課税されず、また、老齢給付金を受け取れるのは原則として60歳に達した時点からとなる。

■1月から制度が改正。従業員が掛金を支払うと何がいいのか?
 これまでも、拠出限度額の引き上げなどの改正が何度か行なわれてきた確定拠出年金制度だが、2012年1月にも制度の一部が改正される。
 今回の改正は、8月4日に成立した「年金確保支援法」によるもので、その一番の注目ポイントは「企業型」の確定拠出年金でも、加入者が自ら掛金を支払えるようになることだ。
 具体的には、「事業主が支払う掛金と本人掛金の合計額が拠出限度額(月額5万1000円(他に企業年金がない場合)ないし2万5500円(他に企業年金がある場合))を超えない範囲」で、かつ「本人掛金が事業主掛金を超えない範囲」の金額を拠出することができる。
「確定拠出年金の掛金を自分で支払うと、何かいいことがあるの?」と思う人もいるかもしれない。
 目先のメリットとしては、税の優遇措置が受けられることだ。従業員が掛金を拠出する分については、その全額が所得控除の対象となる。たとえば、月額2万円の掛金を支払ったとすれば、年24万円が所得から丸々引かれるわけで、所得税率が20%の人なら4万8000円も所得税が軽減される。住民税についても同様に軽減措置がある。
 つまり、税金面で優遇を受けながら、老後資金を蓄えることができるようになるというわけだ。
 また、副産物的なメリットとしては、自分のサイフから掛金を出すことで、確定拠出年金に対する意識が変わる――これまで以上に関心を持つようになるということも挙げられる。
 さらに今回の改正では、事業主が従業員に対して継続的な投資教育を実施する義務を明文化することで老後所得の確保に向けた従業員の自助努力を支援する、という内容も盛り込まれている。今後は、従業員への投資教育もこれまで以上にきちんとしたものになっていくことが期待できるだろう。

■企業の事務作業が煩雑になるデメリットも
 ただし、今回の改正には課題もあると指摘するのは、わが国の確定拠出年金制度の創設作業にも関わった、確定拠出年金に詳しいタワーズワトソンのディレクター・浦田春河さん。
「事業主掛金は、給与比例で設定している企業が多いと考えられますが、従業員の掛金は事業主の掛金の範囲内で、かつ総額が月額5万1000円(あるいは2万5500円)という制限があるため、事業主拠出が2万5500円(あるいは1万2750円)を超えると従業員が拠出できる額は徐々に減っていきます。従業員によって受けられる所得控除の額が変わってしまうため、不公平感につながる可能性があるのです」
 「さらに、事業主の掛金によって従業員の掛金が変わることで、1人1人に限度額を通知するなど事務作業の手間もこれまで以上にかかってしまうことが考えられます」
 浦田さんは、法律施行後は事務手続き軽減のために、掛金を給与比例方式から定額方式(あるいは資格別定額方式)を採用する企業が増えてくるのではないかと予想している。
 いずれにしろ、企業型の加入者にとっては、今回の改正が大きな意味を持つことには変わりない。「確定拠出年金なんて面倒くさい」と思わずに、積極的に関わっていくことが大切だろう。(取材・文/肥後紀子)

[ダイヤモンド・ザイ 2011年10月13日(木)16時25分配信]